そうなのだ。実は今あたし、こんな朝早い時間から噂の神谷学園の校長室にいるのだ。

たとえ所作振る舞いが“お嬢様”になれなくても、決められた転入日は今日。

沙希は「嘆かわしい」と大げさな素振りで頭を抱えていたけれど、もう知ったこっちゃない。

あたしはあたしなりに十分頑張ったし。



そして、神谷学園についてだけど、まず校門に立った瞬間、あたしはこの一週間で通算100回目近いんじゃないだろうかと思うくらいのめまいを感じた。

東京ドームですか、と言いたくなるような広大な敷地の真ん中にそびえたつ、お城型の巨大な建物が校舎だというのだから。

この建物、ドイツの古城を特集した写真集で見た気がする。

何より、学校内の道を覚えるのに時間がかかりそうだなぁと思った。

校舎に入るとある意味予想通りのレッドカーペット、その下は大理石、壁には見るからに高そうな彫刻や壺、絵画の数々。



『あ・・・』



途中、あたしは一枚の絵に目を留めた。