『あんたはSPでしょ!?なんでこんなことまでやんの!!』



一度だけ、そう抗議したことがある。

そうしたら沙希は、見たこともないような冷やかな目をしたまま口角をきゅっとあげた。



『この私がお守りする方が今の鈴様のままでは、神谷学園で示しがつかないんですよ』



・・・あたしは初めて、人間の背景にブリザードが吹く光景を見た。

要はあたしのためではなく、自分の立場とプライドが許さないからあたしがしっかりしろってか。

俺様の沙希らしいあまりに自分本位な言い分に言いたいことは山ほどあったけど、あんな恐怖を前に逆らうほどあたしもバカではない。

そんなわけで、この一週間素直に特訓を受けた、んだけど。



「面白いくらい成果が見られませんね」

「だからあたしは生粋の庶民なの!!16年の庶民歴が7日で覆せるか!!」



沙希はまるで「感心した」とでも言いたそうな態度を取りながら、神谷学園の制服に身を包んだあたしを頭のてっぺんからつま先まで見回す。

なんだその嫌味は。とイライラしながら叫べば、沙希はしーっとその綺麗な指先をあたしの口元に当てた。



「鈴様、お静かに。ここは校長室ですよ?」



うぐ、と唸ってあたしは黙る。