「何がおかしいのよ、沙希」

「いえ、鈴様のお宅は最後まで本当に家族仲がよろしいと思いまして」



もう貴方の皮肉は聞き飽きましたよ、言い返す元気もないですよ今は。
瞳を閉じて深く吐き出すように息をつくあたしの耳に「本音ですよ」と沙希の柔らかい声が届く。

そして、



「今の言葉を謝罪するために、元気に戻らなくてはなりませんね」



フォローに近いはげますような言葉がまさか沙希から言われると思ってなかった。

目を開けて横目で沙希を見れば、あまりに甘いマスクで笑ってる。

ホント、あたしじゃなかったらすぐこいつを好きになってるよ。



「・・・うん」

「大丈夫ですよ、何があっても私が鈴様をお守りいたします」



だからそういうこと簡単に言うなっつーの!

ぐっと唇を噛んで、一番手前にあったクッションを沙希に思いっきり投げつけた。

すぐに2個のクッションが倍以上の力で投げ返されて顔に当たった。





【シンデレラストーリー、万歳】





(そんなわけで、あたし本日付で神谷家に居候することになりました)
(むしろこれ、醜いアヒルの子なんじゃないの?)
(「鈴様は白鳥じゃないじゃないですか」)
(「ホントうるさい」)