「鈴―――っ!!!」
悲鳴に近い声であたしを呼ぶ叫び声に、ばっと振り返る。
バッグドアガラス越しに、追いかけるように走るお母さんが見えた。
「お母さん・・・!!」
「鈴っ、・・・っ、鈴!!」
泣きそうに見えるお母さんにつられてあたしも涙腺が緩んでいく。
車のスピードに追い付くはずもなくどんどん離れていくお母さんがぼやけて見えた。
「鈴ーーーっ!!玉の輿乗るのよーーーっ!!!」
「あほかぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ホント感動と涙が無駄になったわ!!
窓から全力に叫び返すとお母さんの足は止まり、そして車が角を曲がったせいで見えなくなった。
あたしは顔を正面に戻し、体中の力を抜いてふかふかの椅子に埋もれる。
「最悪・・・ホント最悪、お母さんに最後に言い残した言葉があほかぁってむしろあたしがあほだよ、なんなの・・・」
脱力すぎてもう考える思考もない。
ぶつぶつと後悔を独り言として零していると、クスクスと空気を揺らす音が聞こえて首だけを持ち上げた。