そう言ったあたしの頭をぽんぽんと叩いてから、沙希はリムジンの後部座席を開けてくれた。
その紳士的な対応に面喰ってぶっちゃけ戸惑ったけど、覚悟を決めて乗り込む。
(うわ、ソファみたいにふっかふかな座席なんだけど!っていうか中広っ!)
閉められたドアを見ればすぐに窓の開閉ボタンが目について、あたしは操作すると開けたそこから胸より上を乗り出した。
「行ってきます!!」
見えるみんなに全身で表わすくらい手を大きく振れば、家族も親友も御近所さんもみんな手を振り返してくれる。
なんだかんだ言って、恵まれた環境で育ってきたなぁとしみじみ思った。
「そろそろ参りますよ」
身を乗り出したままのあたしの顔を覗き込んだ沙希にそう聞かれたから、笑顔でVサインをしてみせた。
・・・ら、パチンとその手を叩かれるっていう。え。
「ちょ!何!?」
「はしたないですよ、これから神谷の家に行く人が」
「───いやいやだからって叩くことないでしょ!っていうかアンタは教育係かなんかか!」
「だから黙って言うこと聞きなさい。ね?」

