「───小難しい顔をして、いかがされましたか?鈴様」
「裏の裏の裏の裏ぐらいまで読んでたらわけわかんなくなった」
あたしの返事に、沙希は心底呆れた顔をした。
さすがにそれは分かるぞ。
「今バカって思ったでしょ」
「分かりましたか?」
「うん、いくらなんでも分かりやすすぎる」
むしろその質問があたしのことバカにしてるんじゃないの?
卑屈に磨きがかかったあたしがそうとさえ思っていると、「あのー」という控えめな声が間に入った。
あたしと沙希が揃って顔を向けると、相変わらず眉ひとつ動かさない由美が小さく手を上げていた。
「そろそろ出発しないと、神谷さんちにお伺いすると約束してる時間過ぎる気がするんですけど」
「え、嘘!由美今何時!?」
「5時」
約束は確か7時なはず・・・!そしてここから車で2時間弱と聞いているのに。
神谷さんなんて偉大な方との約束なんて恐れ多くて破れないよ!!
「やばいやばいやばい!」と慌てているあたしの横で、「ふむ」と冷静に顎に手を当てる沙希。

