「ありがとうご「そろそろ乗りますので、ご安心ください。先にお乗りになっていて大丈夫ですよ」
お礼を言おうとした途中、遠慮ない言葉と行動で打ち砕かれる。
もちろん、こんな行動をとる人間をあたしは今のところ一人しか知らない。
「沙希!なんで話遮ったの!」
「すみません、鈴様。荷物に間違えられているのかと思いまして」
「アンタあたしのこと本っっっ当にバカにしてるよね」
「お言葉ですが、それは鈴様の考えすぎですよ」
「っ、沙希ねぇ「あ、すみません、私はこれで・・・」え、ちょっと待って!」
あたしと沙希の言い合いを気まずく思ったのか、そそくさと去っていく“いい人”。
癒しが!あたしの救いがオアシスが!!
すがるように手を伸ばしたけれど、彼がふり返ってくれるどころか立ち止まってくれるわけもない。
「~~~っ!」
車に乗り込んでしまった彼とあたしの間をパタンとドアの音が冷たく遮る。
それを見届けてから、あたしは声にならない声を上げて元凶を力任せに睨みつけた。

