「それに、影響受けすぎ」



言葉と同時にあたしの書いていた絵をすっと指差す由美。

ネイルまで整えられた細長い美しい指先を目で追って、あたしはちょっと苦笑する。

元は真っ白だったキャンバスに広がるのは、深海を彷彿とさせる青の世界。

なにより、ただプロごっこをしていただけの、丸や線の重なり合い。

普段は緑を基調とした風景画を描いているあたしを知っていれば、

モチーフも色彩も普段とほど遠いことなんて、誰が見ても明らかなこと。

たまにはこんな絵も悪くないかなー、と自分の描いた絵を見つめながら「でしょ?」と由美に答えた。

正直、真似してみたけどほど遠いくらいあたしの絵の奥底は浅い。



「ところで、展覧会何時までなの?」

「やってるのは8時までなんだけど、入館は7時までだったかな?」



文字ではなく写真として記憶しているパンフレットを思い出して答える。

鞄に入ってるよ?と由美の顔を見ようとしたけど、親友の首はくるりとあたしの正反対を向いていた。