「あぁぁぁ、うちの表札がぁぁ」
「申し訳ありません、代わりのものはこちらで用意させていただきます」
「うふふ、ちょうど良かったわね、ずいぶんと古くなってたし!」
「由美ちゃん大丈夫―?悪いね、妹のせいで」
「あぁ、私は平気です。あ、鈴、もう私に近づかないでね」
だから何かおかしくないぃぃぃっ!!?
誰にも何も心配されないのは、信頼されてるからなのか図太いと思われてるからなのか・・・とにかくプラスの感情でないことは確か。
少なからず、“非日常”にあたしより順応性の高い人達の対応にがっくりうなだれざるを得ない。
───そんなあたしの肩をポンポンと遠慮がちに叩く手に振り返る。
「鈴様、お荷物を乗せ終わりましたがいかがいたしますか?」
声を掛けてくれたのは、青いユニフォームを来た引っ越し作業員の男の人。
なんだか久々にあたしの意見を尋ねるような質問を受けた気がして、こんな小さなことなのに思わず泣きマネをしてしまった。
すると、「大丈夫ですか!?」と慌てた様子で気遣われ、これまた感動。
それがたとえあたしが様付けで呼ばれてしまう立場だと思われているからにしても、彼はオアシスだ。
この人、“いい人”認定。

