「鈴様、お別れの御挨拶はお済ですか?」
この会話で済んでるように見えんのか。お前の目、節穴か。
現代風に言えば“KY”な沙希をそういう目で見つめたけど、沙希はにっこりと気付かないふり。
逆に訴えるようにその顔に「早くしろよ」と書いてあるように見えるのは、あたしの錯覚だろうか。
「鈴」
あまりに個性にあふれて自由奔放な人が集合したせいで収集の付かない状態の中、冷静に声を出してあたしの前に立ったのは由美だった。
「鈴の体からその宝石取り出して、安全確保出来るまでの間だけらしいから」
「由美・・・」
「大丈夫。鈴ならどこでも上手くやっていける」
由美は表情一つ変えないで無感情に喋っているけれど、あたしにはわかる。
・・・あたしを、励ましてくれてる。
「辛くなったら、いつでも私に会いにおいで」
そんな優しくて愛にあふれた言葉。クールで一匹オオカミな由美から聞くのは本当に稀で。
めっちゃ感動したあたしは、涙交じりに「由美ぃぃぃ」と大好きな親友に抱きついた。
否、抱きつこうとした。

