ぐいっと沙希の顔が近付いた。
おーおー、相変わらず端正な顔立ちだこと。
とか冷静に思ってる場合じゃない。
こいつの目、マジだ・・・!!(本気と書いてマジと読む。真剣と書いてもマジと読む)
「分かった!分かったから!転校もちゃんとするし黙るから!だからどいて!!」
必死になって沙希の胸を腕で押し返しながら足をバタつかせる。
あたしを守るはずのSPのせいで貞操の危機ってあまりにも笑えないじゃん!!
次に何が起こるか分からずぎゅっと目をつぶっていたら、ふっと体が軽くなったことに気付いてゆっくり目を開いた。
顔を上げれば、沙希は何事もなかったかのようにネクタイを直しながらベッドサイドに立っていて。
おそるおそる、探るように体を起こすと、沙希の視線が急にあたしに向いて思わずびくりと跳ねて体を固まらせる。
「───すみませんでした」
「え?」
その沙希が、唐突に頭を下げるものだから、目を丸くするあたし。
一瞬で硬直状態が解けて、マヌケな声が口から洩れた。

