そんな状況にあっけにとられてるあたしなんて気にしないで、
沙紀はまた「アポロンというのは」とさっきの仕切り直しを勝手に始める。
「神谷財閥に“アフロディーテ”と共に伝わる家宝の1つで、
鉱石としての希少価値は劣るものの、その成分の分析次第によっては
世界の様々な機器に対する開発が大幅に進歩するんじゃないかと期待視されていて、
有用性・将来性の面から価値が高いと見なされているから、」
「ちょ、ちょっと待って!」
「あぁ、これはちゃんと正式に旦那様にもらったもので、」
「そうじゃなくて!!」
いつまでも続きそうな沙紀の説明はまるで広辞苑かなにかを読んでいるようだ。
あたしは慌てて遮って「つまり?」と問いかける。
沙紀は「つまり?」とオウム返しした後、
あたしが求めている答えに気付いたのか「あぁ」と言って悪びれもなく笑った。
「さっきの銃弾は、間違いなく指輪を持ってる鈴狙いだな」
「なんて物騒なものくれたのよぉぉぉぉーっ!!」

