「一番はね、その絵すんごく似てたの」

「似てたって?」

「“思い出の絵”に」



そう言ったら、由美は丸い目をさらに丸くして瞬かせた後、「もしかして鈴が美術部入るきっかけになった?」と人差し指を唇に当てた。

「そう」とあたしが頷くと、「冗談でしょ」と由美は鼻で笑う。



「私もその絵見たけどさ、素人の色彩やデッサンじゃなかったよ?

そんな絵が高校生部門のコンクールにあるわけないじゃない」



「鈴がその“思い出の絵”を描いた人に憧れてるのは知ってるけど」と由美は困った様子で眉根を下げた。

うん、あたしだって分かってますとも。

でもね、



「───本物、見てみてみたいんだよね」



ぽつり、と呟いたあたしの言葉は宙に吸い込まれるように消えるくらい小さかった。

ゆっくり、ふつふつとまた沸き起こってくるあの感動。

ゴッホでもルノワールでもモネでもピカソでも尊敬はしたけれど感動しなかったあたし。

こんなドキドキした感情、またとない。

そう、“想い出の絵”を見たときと同じ衝撃・・・こんなの、絶対に、偶然じゃない。

またジワリと感じる高揚感に浸っていると、「相変わらずの絵画馬鹿ね」と由美が苦笑した。