Sの法則-平凡姫と俺様SP-




「鈴」



何度も、確かめるように沙紀はあたしの名前を呼んだ。

一年以上呼んでいなかった分を埋めるように、

あたしも「なぁに?沙紀」と彼の名前を口にした。



「待たせてごめんな」

「・・・うん、待ちくたびれたよ」



意地悪を言うあたしにも、沙紀は笑ってくれる。



「だから」



沙紀は、抱きしめていたあたしからゆっくりと一歩退くと

ポケットから何かを取り出した。

「何?」と問いかけようとするまでもなくその箱の大きさに気付き、

そして口にするよりも早くそれが開けられてあたしの胸が震える。

キラキラと輝く、シルバーの───指輪。



「これからは、ずっと俺と一緒にいてください」



沙紀からの申し出に、言葉より先に涙が溢れた。