「お・め・で・と・う・・・送信っと」
卒業式も、そのまま学食で行われた謝恩会も終わった帰り道。
少し早咲きの桜吹雪の中、
あたしは卒業証書の入った筒で肩を叩いて帰宅路についていた。
反対の手では、前の学校の友人達へ卒業おめでとうのメールを送信したばっかりだ。
パタンと音を立てて閉じた携帯は、未だちょっとブームに乗り遅れてるガラケー。
それを見て「ださ!」と笑い飛ばしたマナも、
「お金がないの?」と心配そうにしていたののかちゃんも、
「鈴ちゃんに似合ってるよ」と複雑な言葉を言ってのけた龍世君も、
こっちの生活に戻ってきてからは会っていない。
(今みたいにメールのやりとりはするけどね)
───もう一年が経つんだ・・・
そう思って、綺麗な晴れ空と桜のコントラストを見上げた。
一年前、とは思えないほど、すさまじく通り抜けた毎日だった。
今でも思い返せば夢でも見ていたんじゃないかって思うような、
非日常的な出来事の連続。
それが現実だって教えてくれるのは、お腹にある傷とあたしの心だけ。

