「何にも考えてないよ」

「・・・」

「だって、あたし、今日やっと龍世君の本音とか素顔を知って、

考えることなんて何もないから」



だから代わりに、前の生活に帰る前に少しでも龍世君のこと知りたいな。

短い間だけど、それでも少しでも龍世君と一緒に沙紀がいない寂しさを共有できたらいいなと思う。

そうあたしの気持ちを伝えたら、

「別に寂しくなんてないし」って龍世君は口を尖らせた。



「でも」

「でも?」

「・・・しょうがないから、お菓子くらい買ってきてあげるよ」



そう言ってくれた龍世君がかわいくて、笑いそうになる。

せっかく我慢しようとしたのにやっぱり耐えきれなくて、

こらえようとした分爆発するように吹き出してしまったら「ムカつく」と頭を叩かれた。



沙紀が帰ってきてくれたとき、龍世君も素直に「ごめんなさい」が言えるといいね。

それで、ぎこちなくても、ゆっくりでいいから前みたいな兄弟に戻ってくれれば良いな。

そんな思いを込めて、あたしも容赦なく龍世君の頭を叩き返した。