「兄さんと鈴ちゃんを見てて・・・
兄さんに、幸せになってほしい、って思うようになった。
もう“神谷”から解放されていいんだよって、
そのためにこの家から出て行けば良いのにって、
そう感じるようになったんだ」
やっと、沙紀に対する黒い感情が消えそうだったのに・・・そんなとき、沙紀がした犯罪を知った。
龍世君は辛そうに、途切れ途切れながら言った。
「怒って問題起こせって願ってたはずなのに・・・僕が仕向けたことなのに、
どうしてこんなに苦しいんだろう」
「───うん」
「こんなはずじゃ、なかったんだ」
龍世君は沙紀と同じセリフを言った。
彼も彼なりに苦しんでいたのだと、あたしはこのときに初めて知った。
「せめて鈴ちゃんが泣きわめいて僕に当たり散らしてでもくれたら、
心ゆくまで悪役に成りきれたのにね」
本音とも冗談とも取れる言い方で、龍世君はそう呟いた。
そして、本当に小さな声で「悪役は罪悪感なんて感じちゃダメだよね」なんて言う。

