「そうしたら、だんだん・・・
兄さんは逃げたんだって、ずるい、うらやましいって・・・
思うように、なって」
「うん」
「兄さんが帰ってきたとき、その気持ちが、爆発した」
龍世君は、自分の両手で顔を覆ってしまった。
「僕がこんなにも抜け出したくて仕方がない家からせっかく出られてたのに、
わざわざ戻ってくるなんて───どうしようもなく、腹がたったんだ」
「・・・」
「それで逃げるように留学して、
当てつけみたいに兄さんが大事にしてた絵をコンクールに出した。
これで怒って問題でも起こして、さっさとクビにでもなればいいって思った」
さっき、沙紀は『龍世に嫌われてる』って言った。
それは気のせいなんかじゃなくて、
龍世君は本当に沙紀に対してマイナスの感情をぶつけていたんだ。
でも、今沙紀は龍世君の思い通りになっているのに、
どうして彼はこんなにも苦しそうなの?

