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「泣かないんだね」
沙紀が警察に連れていかれる背中を見送ったあと、2人きりになった病室で龍世君はそう言った。
「泣いて欲しい?」
そう問い返せば、龍世君は「別に」とそっぽを向いて呟いた。
ちょっとだけ、笑ってしまった。
それに気付いたのか、「何?」と龍世君はちょっと不服そうに口を尖らせる。
「素直じゃないね」
だって分かってしまった。
龍世君が、その気もないのに“僕にすれば良かったのに”って言ってくれてた理由。
杏華様のことも、今日のことも、全部分かっていたから。
沙紀との間には、たくさんの障害があるって知っていたから。
だから、あたしが傷つかないように予防線を張ってくれていたんでしょう?

