あぁ、だからか。
あたしはあの絵を思い出して妙に納得した。
なんの対象もない抽象的な絵なのに、
奥が見えない深い色をしていた絵だった。
見た瞬間、愛しさや不安、楽しさや寂しさ、嬉しさと悲しみ、
そんな反対の感情が沸き上がったのは覚えている。
(今も思い出せば胸がいっぱいになるほど)
そっか、あれが沙紀の“お母さん”───
「だから、龍世が自分の絵としてコンクールに出したとき、
そしてそれが入賞して世間にも龍世の絵として認められたとき、
俺はすごく、悔しくて・・・悲しかったんだ」
龍世君がコンクールに絵を出したこと、さっきの沙紀は『イライラした』と言った。
でも、きっとこっちが本音なんだね。
大事な“お母さん”まで奪われたら、それは悲しくなるよね。
(やっと、沙紀の言っていた、絵が『大事』だという意味が、分かった気がした)
それで、話が“アフロディーテ”に繋がるんだ───。
だんだん、沙紀の想いや、今までの時系列が繋がってきて、あたしはこくりと頷いた。

