それから、後頭部にあった彼の手に力がぐっと入って、
あたしはあっという間に沙紀の胸板に顔を埋める形になった。
「───“思い出の絵”と、“コンクールの絵”」
「!」
「鈴が話してくれただろ?」
「うん」
まさか、という想いが沸き上がり、そして徐々に胸いっぱいに広がっていく。
さっきから、ううん、ずっと前から感じていた違和感がほどける感覚。
それはもう確信に近くて、あたしはなんだか泣きそうになった。
「俺の描いた絵だよ、2枚とも」
やっぱり、と思った。
それと同時に、嬉しかった。
中学生のときに、あたしを辛い毎日から救い出してくれた恩人に、
やっと出会えたのだから。
───あたしが知らなかっただけで、沙紀はずっと前から傍にいてくれたんだ。
出会う前から、お互いの存在を知る前から、ずっと。ずっと。
それは偶然なんかじゃなくて、まるで運命のようで。
「沙紀、」
「ありがとう、鈴」
ありがとう、と言おうとしたあたしの言葉は、沙紀が同じ言葉で遮った。

