「あいつが俺を嫌ってる。
そう決定的に俺がわかったのは、絵のことだった」
「絵?」
「あぁ。さっき、俺は2枚絵を描いたって言っただろ?
その1枚は家を出るときに出展した。
もう1枚は───龍世が、自分の名前でコンクールに出したんだ」
お母さんの目を逃れながらたくさんの時間を掛けて描いた絵。
きっとたくさんの想いが詰まった絵だったに違いない。
それが2人の確執になってしまうくらい、沙紀にとってはすごく大切だったんだ。きっと。
「すごく、うまく言えないけど、・・・イライラしたんだ」
「・・・うん」
「当時は杏華に捨てられた傷も癒えていなかったし、
ぬけぬけと家に戻ってきた自分も許せなかったし。
気付かないフリする親父も、逃げ続ける義母も、
意味もわからず俺を嫌う龍世も、すべてが嫌になって。
大事なもんまで奪われて、溜め込んでた何かが切れた気がした」
沙紀は当時を思い出したのか、苦しそうだった。

