「・・・あとはお前の知ってる通り、杏華は俺を置いて海外へ行った」
「・・・うん」
「また守る人がいなくなった俺は、もう自暴自棄になってる部分もあって。
神谷の担当になる半強制的な流れに、逆らう気力も無かった」
それで、今沙紀は神谷の家にいるんだ───
だんだん自分に近付いてくる話の時間軸に、少しだけドキドキした。
話を聞く緊張感が、ゆっくり高まっていくのが分かる。
「親父は、『旦那様』と呼んだ俺を見て、割り切るようになった。
義母は、俺が家にいることが耐えきれなくなったのか、外で仕事をするようになった。
祖父だけは・・・まだ俺を『沙紀』と呼んでくれたな」
「祖父って、あの・・・」
「鈴が助けた、神谷財閥前会長だよ」
あぁ、そっか。あの人は沙紀にとっておじいちゃんになるのか。
改めて頷いたあたしを見て、沙紀は「忘れてただろ」と笑った。
「そして龍世は───」
「うん」
「俺に対する嫌がらせが、多くなった」
「・・・そ、っか・・・」
家を出るまで仲良くしてたのにな、と呟いた沙紀はどこか寂しそうで。
あたしは寄り添うように、沙紀の肩に頭を乗せた。

