「神谷以外の外部の関係者は、隠された俺の存在なんて知るわけがない。
俺のことを知っている神谷の一族は、一般家庭の母親から生まれた俺を疎ましく思っている。
・・・俺の居場所なんて、最初から無かったんだ」
「沙紀・・・」
「俺が知らなかっただけだった」と沙紀は小さく付け足した。
思わず息を飲んでしまったあたしの音は静かな病室に嫌味なくらい響いて、
沙紀はあたしに顔を向けると優しく頭を撫でてくれた。
本当は辛くてたまらないのは沙紀のはずなのに、
沙紀はこんなときでもあたしに優しくしてくれた。
そして、沙紀はまた話を続ける。
「新しく来た“母親”は、
外の関係者に俺の存在がバレた時、きちんと理由付けするためだけに親父が結婚した存在だった」
「・・・」
「“あの人”にとってはラッキーな玉の輿。
そして俺は設定上“実の息子”。
そりゃぁかわいがるだろうな・・・龍世が生まれるまでは」
顔を伏せた沙紀は、出会ったときより少し伸びている髪のせいで表情が見えない。
それでも息混じりの声がなんだか苦しそうで、
あたしはただ沙紀の手を撫でることしか出来なかった。

