「私はこれでも鈴様をお守りするSPですから」

「でもそうやって無理に笑ってんのってしんどくない?」

「鈴様には、私の笑顔が無理に笑ってるように見えますか?」

「うーん、いつもってわけじゃないけど、今強引に笑ってんなぁって思う時はなくもない」



極端な例でいえば、うちのお母さんに言い寄られている時とか。

あたしの言葉に、沙希はクスクスと音を漏らして笑う。ほら、今は自然な笑顔だ。



「あたしさぁ、こう見えて人間観察趣味なんだけど?」

「あぁ、そういう方って本当の趣味が無い方多いですよね」

「だから、一々突っかからないでくれるかな」



なんで沙希とあたしの会話って毎回毎回こうなんだろう。

あたしがなんか言って、毎回沙希が皮肉を返して、それにあたしが突っ込むっていう。なんなんだ、沙希はあたしに恨みでもあんのか。

いや、あるか。とすぐに自己解決。

普通に考えて、なにが楽しくて突然現れたこんなへんちくりんの庶民の命を自分の命に代えてでも守らなきゃいけないんだって話だよね。

はぁ、とため息交じりにおでこを膝につけ頭をわしゃわしゃ掻きまわすと、

そんなあたしの頭に「これからは、観察するまでもない環境に行きますから」という沙希の声。