近い距離で見つめ合うその瞳に、さっきまでの悲しげな色は宿ってない。
何か決意を決めた、あたしの大好きな沙紀の瞳だった。
「鈴に、全部聞いて欲しい」
「・・・うん」
少し考えた後に頷いたあたしを見て、
沙紀は「ありがとう」と小さく微笑んだ。
もしかしたら、すべてを話す沙紀の方が緊張してるかもしれない。
そう思って両手で握った沙紀の右手は、ほんの少しだけど震えてて、
そして驚くほど冷たかった。
「あのな」
「うん」
「さっき龍世が言ってた通り、俺の本名は“神谷沙紀”。
龍世と血の繋がった兄弟だ」
「じゃぁ、神谷先生が・・・?」
そう問いかければ、「俺の親父だよ」と沙紀は頷いた。
じゃぁ、普段沙紀はお父さんのことを「旦那様」って・・・。
あたし、まったく気付かなかった。と思いながら沙紀を見つめれば、
「気付かなくて当然だから」と沙紀は少しだけ笑った。

