「・・・さ、き・・・」
ゆっくりと沙紀から離れて、彼と視線を合わせる。
それでも、あたしの手はぎゅっと沙紀の手を握ったままだったけど。
沙紀は泣きそうな目をしていた。
いつもの自信満々な力を帯びた、鋭くて綺麗な瞳じゃなかったけど、
それでもその黒曜石のような瞳にあたしを映してくれていた。
「・・・・・・なんだ」
「え?」
沙紀は言いにくそうに口を何度か開閉した後、そう呟いた。
掠れていて、まったく聞き取れなかった。
───ううん、あたしの耳が、聞こえないふりをしていたのかも知れない。
ちゃんと聞き取れたとき、あたしの世界は足下から崩れ去ったのだから。
「“アフロディーテ”を盗み、お前の身体に入れたスパイ・・・
その首謀者は───俺なんだ」

