何?そういう言葉が分からないとでも言いたいわけ?

いや、確かに一瞬“ソウメイ”って頭でカタカナ変換されたけどさ。

嫌味?嫌味なんですか?嫌味なんですよね、知っています。

そう矢継ぎ早に言えば、沙希は「考え過ぎですよ」とクッと口角を上げた。



「そうは言ったって、そういう顔する時は大抵図星を誤魔化してんじゃん」



布団の中で曲げた膝の上に顎を乗せようとしたら一瞬だけ痛みが走った。

その痛みさえ八つ当たりするように、あたしは奴を睨む。

すると珍しいことに、その顔から笑顔が消え、いかにも“驚きました”と言っているような表情で彼はこちらをまじまじと見ながら目を瞬かせた。

その表情に、逆にこっちがびっくりして、「え?何?」と聞き返す。



「───どんな顔をしていました?」

「え?」

「鈴様の言う“そういう顔”・・・とはどんな顔ですか?」



まさかそんなことを聞かれるとは思わなくて、あたしが面食らってしまう。

(きっと、さっきの沙希みたいな顔をしているんじゃないのかな)



「んー・・・なんていうか、いつもの笑顔から、さらに口だけがちょっとだけつりあがるんだよね」



こうやって。

そう言って、両手の人差し指で自分の口角を押し上げて見せる。