“アフロディーテ”はない。
それは、
“アフロディーテ”が神谷さんちの手元に戻ったこと、
手術は成功したこと、
命を狙われることはなくなったこと、
あたしはもうただの鈴に戻ったこと、
この生活と別れの時間がきたこと、
もう“SP”はいらなくなってしまったこと、
色んなことを示していて。
自分の命が助かったことよりも、魔法が解けた感覚に寂しさが湧いた。
いつか来る日だと分かっていたけれど、あまりにも突然すぎた。
その現実をまたゆっくりと深呼吸で受け入れながら、あたしはまた沙紀を見る。
「・・・きょ、うか・・・さまは・・・?」
「杏華は・・・」
沙紀は言いにくそうに少しだけ口を閉ざした。
「杏華は今、警察にいるはずだ」
「・・・け、いさつ・・・?」
予想もしなかった言葉に、あたしは目を見開いた。
沙紀はあたしの言葉に頷くと、また話し出す。
「お前に許容量以上の睡眠薬を飲ませたこと、
そのまま無理矢理病院に連れ込んだこと、
手術同意書を偽造して手術に及んだこと・・・すべて犯罪だからな」
「・・・そっか」

