だからこそ、彼女は“俺”を見てくれていた。
正確には“SP”を仕事として見ていたという方が正しいのかもしれない。
そして彼女が“俺”に触れる度、
どうしようもなく嬉しくて、
どうしようもなく彼女が愛しくなっていった。
長年“SP”として生きてきた俺の仮面を、剥がしてくれた。
“鈴を守る”のが愛ではなくて、“愛している”から鈴を守りたかった。
「・・・杏華、俺はもうお前の“SP”じゃない」
確かめるように、そして言い聞かせるように、もう一度はっきり口にする
杏華はまたぽろぽろと無数の滴を零し、そして杏華の口が小さく動いた。
聞こえはしなかった。
でも「分かっているわ」と彼女は言ったように思った。
「杏華、教えてくれ。鈴はどこにいる?」
杏華の目から狂気が消えてるのがわかり、できるだけゆっくりそう尋ねた。
彼女ははっとしたように目を見開くと、
「私・・・」と言って震える手で口を覆う。
もう一度「鈴は?」と追求すると、
杏華は「ごめんなさい」とはっきり言って顔を覆った。

