「・・・俺は、確かに杏華のことを好きだった」
「だったら!」
「でも、それは今思えば“SP”として杏華を守りたいと思っていただけで・・・愛じゃない」
その言葉に、なにか思い当たることがあったのか彼女は一瞬だけ目を見開いた。
そしてぼろぼろと零れていく涙に、眉が寄る。
ごめん、杏華。お前のせいにして。
本当は俺だって間違ってたんだ。
───杏華を守る、それが一番の愛情表現だと思っていた自分。
だからこそ彼女が俺を置いて黙って外国に行ったときには、
裏切られたと、俺の愛は伝わっていなかったんだと、感じた。
だけど、
───あたし、守られてばかりは絶対に嫌だからね
初めて会ったとき、鈴は俺の顔をまっすぐに見てそう言った。
“守る”ことが俺の仕事だと思っていた俺にとって
すごく衝撃的だったのを覚えている。
言うことなんて全然聞かないし、
自由奔放で、無鉄砲で、純粋で、曲がったことが大嫌いで、
そして本当に生粋の庶民だった。

