俺が何も応えないでいると、その微笑みのまま彼女は
「私を迎えに来てくれたんでしょう?」
とそのまま俺に手を伸ばす。
その手を、俺はぐっと力一杯掴んだ。
一瞬痛みで顔を歪めた彼女を気にすることも無く、
俺は一番聞きたいことを口にする。
「杏華、鈴はどこですか?」
「っ、鈴鈴って・・・沙紀はどうしてしまったの?」
「答えろ、鈴はどこだ?」
今までずっと、彼女と付き合っていた間でさえも、
俺は彼女の前で敬語を崩したことはなかった。
それは、彼女が“SP”である俺を愛し、切望していたと知っていたから。
でももう俺は彼女とはなんら関係が無い。
言葉を荒げたことに対して、彼女は笑顔を崩して目を丸くし、体をびくつかせた。
けれどその顔はみるみるうちに歪み、俺に怒りをぶつける。
「っ、あんな女のどこがいいの!?」
「・・・」
「あたしの方が沙紀を愛しているのよ!
どうして沙紀も、あの女もそれを分からないの!!」

