「ま、いっか。今から行ってもどうせ遅いかもしれないし」
「・・・龍世様は、彼女が何をするかご存知なのですか?」
「ちゃんと聞いてるわけじゃないけど。
だいぶ鈴ちゃんに対してずいぶん怒ってるみたいだったから・・・お前絡みでね」
龍世様の言葉にかっと身体が熱くなる。
「分かっていらっしゃったのに、どうして彼女に協力したのですか?」
努めて声を抑えて問いかける。
それでも声は震えていた。
そんな俺の様子を見て彼は「別に?」と笑う。
「協力する理由もなかったけど、しない理由もなかったからね」
「!!」
「何が起きても不思議じゃないって、お前も分かってるでしょ?
・・・それが犯罪でも」
その言葉に焦りが増した。
それは俺も感じていたことだったから。
この冷や汗が出る、言葉に出来ないような嫌な予感が頭を占めて離れない。
早く、鈴の「沙紀の心配性ー」という笑顔が見たかった。
今は龍世様と話している場合じゃない。

