時計を見ると8:41。
だいぶ時間は経っているが、間に合うはずだ。
そう思ってプリントを机に起きドアに向かった瞬間、すぐにその存在に気付いた。
「行かせないよ?」
「龍世様・・・」
開いたドアに寄りかかるようにして立っていた人物、龍世様だった。
「杏華に協力頼まれてるからさ。沙紀を来させるなって」
「・・・どいてください、龍世様」
「僕も神谷の人間だよ?言うことが聞けないっていうの?」
有無を言わせぬ瞳だった。
彼の言葉は合っている。
でも、それよりも、俺には鈴の元へ行かなければならない焦りでいっぱいだった。
「私の雇い主は旦那様、主は鈴様ですから」
俺の答えに、彼は「そっか、口答えするんだ」と言いながら声を上げて笑った。

