いや、でも俺が部屋を出るときには龍世様が一緒にいたはずだ。
彼の部屋に行っている、もしかしたら食堂かもしれない。
なんとか自分の心を落ち着かせ、部屋を出ようとしたときに・・・偶然、彼女の机が目に留まった。
今日の授業のノートが乱雑に置いてあり、
そのうちの一冊から何枚かプリントがはみ出していたのだ。
(・・・そういえば)
今日学校で、彼女は杏華から何かプリントを受け取っていなかっただろうか。
確信にも似た、予感だった。
俺は机まで走ると、そのプリントをぐしゃりと音を立てて掴む。
どこだ、どこにある。鈴はどこにいる。
血眼になって探したプリントの片隅に、そのメッセージはあった。
『今夜8時、お一人で綾小路家別邸へ。龍世に話は通してあります』
ぎりっと奥歯を噛んだ。
鈴、なんで言わなかった。
杏華、何を考えている。
龍世様はどうして協力した。
それ以上にどうして俺は気付かなかった。
それでもただ、俺は鈴の元へ行かなくてはいけなかった。

