「なんでまた」

「旦那様からの御通達です」

「じゃなくて。どうして転校?」



その見目麗しい顔に微笑を称え、普通の女の子なら赤面するだろう落ち着いた低音ボイスで口を開いている。

けれど、その笑顔の奥からたまに出て来る毒の存在知っているあたしは、早々に免疫がついてしまった。

そんなわけで、今だってその顔なんかにいちいち反応するはずもなく、むしろそんなことよりも興味があるのは言葉の内容であるわけで。



「鈴様、眉間の皺がすごいですよ」

「うるさい」



転校?何それ?

頭の中をクエスチョンマークで埋め尽くしている分、きっと女の子にあるまじき顔をしていたのだろうことは想像がついた。

でも沙希に言われるとすさまじくむかつくのはなんなんだ。

あたしがジッと沙希を見つめて(睨んで?)いると、その視線を受けた彼は肩を落とすように息を吐いた。



「自覚されているでしょう?」

「・・・」

「貴方は常に狙われている。

普通の生活に戻っても周りに危害が及びますし、きちんと確立された環境下でなければ私も完璧に貴方をお守り出来ません」