「そこに沙紀を連れて行ったら、沙紀の命が危ういじゃない。
愛している人を危ない目に遭わせたくない、と思うのは当然のことでしょう?」
まるで、あたしを諭すような口ぶりだった。
たしかにあたしは庶民で、海外情勢なんてテレビで見るくらいしか知らない。
だけど、分かるのは、
「・・・あたしだったら、そうはしないと思います」
彼女とあたしは違うということ。
ついに眉だけではなくて、彼女の顔からすーっと笑みが消えた。
「あたしだったら、例え危なくても連れて行くと思います。
“SP”として信じていることも、愛の1つだから・・・愛している彼だからこそ、命を預けたいです」
「・・・」
「沙紀だって・・・ううん、きっと沙紀なら。
愛している人は自分の手で守りたいって感じてるはずだと思います」
沙紀の言う“SPとしての誇り”。
そしてその任務をまっとうする“SPとしての強さ”。
あたしを守るその背中に、あたしは彼の信念を感じていた。
沙紀を“沙紀”として好きだけど、“SP”の沙紀も愛しているから。

