「そんなことありません、と言っても杏華様は聞く耳を持ってくれないんでしょうね」
「あら、あなたの言い分を聞いて差し上げてもよろしくてよ?」
「・・・あなたの考えのままじゃ、どんなに話しても中身がかみ合うことはないと思います」
あたしの言葉に、また彼女の眉がぴくりと動いた。
「沙紀に、あなたとの関係のことは聞きました」
「そう」
「あなたは何も言わずに沙紀を日本に置いていったと言っていましたよ?」
沙紀の未練。あたしの疑問。
その本題を問いかけると、彼女は眉の位置を戻してふふと微笑んだ。
「沙紀を愛していたからよ」
「・・・?どういうことですか?」
「あのね、海外は日本と違うの。
日本みたいに銃やナイフを制御していない国だってあるし、テロなんて当たり前。
本来なら、本当の意味でSPが必要なところなのよ?」
杏華様はそう言って紅茶を口にした。

