この人は、本当に沙紀を・・・“SP”を抜いた沙紀を愛していたのだろうか。
頭の中に、観覧車で聞いた沙紀の言葉がよみがえった。
───独占欲、束縛、過信・・・俺を“俺”として扱わないような態度が増えた
───アイツは、人の心も自分の“物”だと思ってる
その言葉の意味が、分かる気がした。
「ねぇ、鈴さん。あなたはどうなの?
その偶然手に入れた”アフロディーテ”とやらで沙紀を束縛しているだけでしょう?」
「・・・」
「責任を取らせているだけ。弱味を握ってるだけ。
沙紀の気持ちを物で釣って、沙紀自身を物扱いしてるのはあなたの方じゃないかしら?」
確かに、“アフロディーテ”がなければあたしは沙紀に出会えなかった。
沙紀もあたしをここまであたしを必死に守らなかったかもしれない。
でも、それは“SP”としての話。
あたしが話したいのは、“沙紀”の話だ。
やっぱり彼女は勘違いしている気がして、
あたしは言い返すために大きく紅茶を口に流し込んだ。

