入院生活も10日目。
自分でも悲しくなるほど恐ろしい回復力を見せたあたしの体はピンピンしていて、もはやなんで入院してるのか分からないくらいの状態だ。
(神谷先生の腕がいいからだよね、そうだよね。と自分に言い聞かせるのももはや飽きてきたくらい)
もちろん言うまでもないけど、傷口はあるし、抜糸もまだだし、薬も飲んでいるからね。
そうは言ってもとりあえず明日退院というところまで復活した。
そんな日に、沙希から告げられた言葉にあたしは固まった。
「転校?」
「えぇ」
あたしの頭の隣にある花瓶の花を入れ替えながら、沙希は変わらぬ笑顔で頷く。
売り言葉に買い言葉で“沙希”と呼ぶようになってから、だいぶ自然体でコミュニケーションはとれるようになった。
本当に、まだ出会って少ししか経っていないのかと疑ってしまうほどにそのやりとりに遠慮なんてない。
それは沙希のSPらしかぬ穏やかな物腰と、爽やかな笑顔にあるのだとこっそり思ってる。
(まぁ実際は、“刺客”とやらからあたしを守ってくれているからSPなんだけど)