「さて、鈴ちゃん」
沙紀が遠くに行ってしまったのを見て、龍世君が切り出した。
その声のトーンが心なしかさっきより低くなった気がして、
あたしに急に訪れる緊張感。
「行っておいで」
「・・・うん」
「怖い?」
「ちょっと」
そりゃ怖くないわけがない。
ラスボスを相手にするような気分なんだから。
でも、
「だからって、あたし負ける勝負はしない主義なの」
そう言ってあたしは龍世君を見据えた。
彼は相変わらず笑顔の仮面を被っていたから内心は分からないけれど、
あたしの答えに「そっか」とだけ答えた。
「表に、杏華の家の車が来てるよ。
運転手も、SPも、向こうの家の人だから心配しないで」
「・・・」
「沙紀はしばらく時間稼ぎしておくし、この家の人達にも口止めしてあるから」
龍世君の言葉に、あたしは「うん」と頷いた。

