「ごめんね、突然」
「ううん、どうしたの?」
「沙紀に用事があるんだ」
ドアの元に行ったあたし達に、龍世君は視線を沙紀に移した。
「私ですか?」とSPモードに戻った沙紀が訝しんで眉を寄せる。
そんな表情にも動揺せず、「父さんが呼んでるんだ」と龍世君は答えた。
「旦那様が・・・?」
「至急の用事みたいだったよ」
偶然通りすがりの僕に頼むくらいね、と龍世君は笑った。
沙紀はしばらく考えた様子だったけど、あたしに体の向きを変える。
「行ってきてもよろしいですか?」
別に家の中なんだからそんなこと聞かなくてもいいのに。
あたしが笑って「どーぞどーぞ」と答えると、
沙紀は優しく笑って「いい子で待っていてくださいね」とあたしの頭を撫でた。
その笑顔も、その手も、大好きだよ。
だからごめんね・・・いい子じゃなくて。

