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時計がさすのは、もう夜の7:28。待ち合わせまであと32分だ。
ここから杏華様の家までどれぐらい離れているか分からないけど、
行けるかどうか不安になってしまう。
「鈴、そわそわしてどうした?」
なぜなら、あたしの隣にはぴったりと沙紀がいるからだ。
「べ、別に」と答えながらも、内心は本当にそわそわしている。
龍世君に話通してある、って書いてあったけどなんだかんだ彼にも会ってないし。
行かないなら行かないでもいいんだけど、
杏華様の場合なんてったって後が怖いじゃないか。
コンコンッ
そのとき、ドアが軽くノックされる音が響いた。
「はーい!」と大きな声で返事をすると、「僕だよ」という声。
久しぶりに聞く龍世君の声だった。
隣で、沙紀も「龍世様?」と不思議そうに名前を反復した。
ガチャリ、と開いたドアからは変わらない笑顔の龍世君がひらひらと手を振っている。

