「え?」
意味が分からず、プリントと彼女の顔を見比べてしまった。
けれど、彼女は変わらず人形のように微笑んでいるから、
あたしはプリントを受け取るしかない。
ただ、その文面に目を通して、あたしは拍子抜けしてしまった。
「更科先生から預かったものですわ。先日お休みされた分もあるようです」
「・・・そう」
「分からないことがありましたら、遠慮なくどうぞ」
たしかに、書いてある内容は数学だったり社会だったり。
「ごきげんよう」と去って行く彼女の背中を見ながら、
あたしははぁと安堵のため息をついた。
やっぱりあの人に近付くと、言葉が出てこなくなるような威圧感に襲われるから。
覚悟を決めていなかった接点だから、話したいっていう暇も無かった。
「・・・なぜ、彼女に渡したのでしょうね?」
こそり、と沙紀があたしに耳打ちをする。