「で?入賞してもない展覧会にどうして行くわけ?」

「見たい絵があるんだー」



仕方ない、と思いながらパレットと愛用の筆をサイドテーブルに置く。

体全体を由美に向きなおしながら、「インターネットに載ってたの」と説明する。

たしか、佳賞だったと思う。



「まぁ、写真じゃ色調変わるから気持ちは分かるけど・・・わざわざ生で見たいレベルなの?」



ふーんと軽い相槌を打った後に由美は不思議そうに首を倒した。

その言葉に、あたしは首が取れてしまうんじゃないかぐらい大きく頷く。

だって、目を閉じれば思い出す。

たとえ写真でもインパクトのある、引き込まれそうな深い深い青の世界。

綺麗なのに悲しくて、

優しいのに切ない、

初めて見るのにどこか懐かしい、

そんな絵だった。

心臓をわしづかみにされたような衝撃をそのままに思わず見入ってしまって、

パソコンがスクリーンセーバーを起動させるまであたしはただただ囚われていた。

あの感情はそれ以来胸の奥にあって、思い出すたびに私の心を掻き乱す。