「ダーメ。お前は、今日一日俺の言うこと聞くこと」
そんな言葉、ずるい。
本当は沙紀なりにあたしのこと心配してくれること、
聞くのを我慢してくれること、
知ってるから。
沙紀があたしのこと元気づけたいと思ってくれてるのも、
痛いほど伝わってくるから。
この言葉は、沙紀の不器用な優しさだって分かっちゃうんだ。
その意地悪だけど暖かい大好きな笑みに「俺様」とあたしは小さく呟いて、
着替えるためにトイレに向かったのだった。
───着替えたのは、女の子らしいチュニックと、動きやすいショートパンツだった。
沙紀の服の趣味ってセンスいいよなぁ、
なんて選んでもらった服を見ながら感心する。
そういうのもSPの仕事?
いやいや、どっちかっていうと執事さんの仕事だよなぁ。
(SP、といえばあたし一人で公衆トイレに入ったの警備的には大丈夫だったのかな?)
(・・・ま、沙紀ならなんとかするんでしょうね)
そんなことを考えながら沙紀の元へ戻り、あたしは、
「!!?」
完全に固まった。

