「───負けたく、ないから」



龍世君と話した内容は、沙紀には伝えていない。

彼も聞こうとはしてこない。

その言葉を信じたくない、ただみんなのことは信じたい。

沙紀を守りたい。逃げたくない。負けたくない。

綱渡りのようなぎりぎりの精神状態だけど、

あたしの気持ちを保っているのはそういう気持ち。



「俺の前では別に強がらなくてもいいのに」



沙紀はそう言って困った顔をして、あたしの頭をぽんぽんと叩いた。

それだけで胸が一杯になるあたし、本当に重症だと思う。

彼があたしの元を離れるなんて・・・考えたくもない。



「ほら」

「何これ」

「着替え。制服だと遊園地楽しめないだろ?」

「あのね沙紀、話聞いてた?あたしは学校に戻・・・」



あたしは言葉を止めた。

沙紀があたしの口を手で押さえたからだ。