「ちょっと車呼び戻してよ」

「なんで?」

「だって、学校サボりになっちゃうでしょ!」



まぁ今から行っても遅刻なんだけどさ。

でも、サボりよりはずっとマシな気がする。

というか“休み”ってまるでいじめから逃げてるみたいで気にくわない。

沙紀はまったく動こうとしないから、自分で車を呼び戻そうとスマホをポケットから取り出した。

ただ、それさえも沙紀が奪ってしまう。



「・・・沙紀」

「なんでお前、そうまでしてあの学校に行くの?」



杏華様が戻ってきてからもう2週間近くが経とうとしていた。

龍世君とは、気まずくて家で全然顔を合わせない。

だって彼の言葉通り、あたしの環境はまったく変化がないどころか悪化している一方だからだ。

・・・だから本当は、サボりだろうと遅刻だろうと、

あたしの出欠記録が取られてないことだって気付いてる。

あたしは、あの教室で“いないもの”とされているからだ。