「・・・っ、帰って・・・っ!!」
必死にそう絞り出した。
帰らせたってどうせ家にいるのに、
今はもうこれ以上は頭も心臓もココロもパンクしてしまいそうだった。
龍世君は「うん、わかった」と穏やかに言った後、
「考えておいてね」
と、耳を塞ぐあたしの手に唇が触れるように囁いて、
そして足音が離れていった。
そのあと、沙紀がまたあたしの元に来てくれたけど、
あたしはもう沙紀の顔さえ見れなかった。
なにも話せなかった。立つこともできなかった。
そんなあたしの頭を優しく撫でて、沙紀はあたしをおんぶしてくれた。
夕日が沈み、夜が近付いてくる。
沙紀の暖かさと、心地よい揺れに瞳を閉じると、一筋の滴が頬を伝ったのがわかった。
【暖かい私の居場所。・・・本当は、手放したくないの】
(これを失うなんて考えたくもないの)
(本当に大好きなんだよ、沙紀)