僕は杏華と古くからの付き合いだから、彼女の性格は誰よりもよく知ってるよ。
龍世君はそう言ってまた笑みを深くした。
「どうせそうなるならさ、無理に頑張らなくたって、
さっさと諦めた方が鈴ちゃんのためになると思うけどな?」
龍世君の話が頭に入らない。
頭が痛い。気持ちが悪い。
世界の色が無くなる。世界が歪む。世界が・・・消える。
ガタン、と音がした。
龍世君が手を机に付けた音だ、と理解すると同時に、
王子様みたいな綺麗な顔があたしに近付き、彼の柔らかい髪が頰に触れる。
「だから、僕にしておけば良かったんだよ?最初から。
どうして言うこと聞けないのかな?」
「・・・りゅう、せいくん・・・」
「そうすれば、失恋することも、友達を失うことも、なかったのに。
僕なら怖い世界から君を守ってあげられるのに」
優しい声なのに、それはどこか強く責め立てるような色を携えてあたしの耳に入ってくる。
今のあたしに取って、龍世君の言葉はまるで悪魔のささやき。
だめだと、違うと、言いたいのに。
それもいいかも、逃げ出せるのかも、そんな思考も頭を埋め尽くしていく。
聞いちゃダメ。聞いちゃダメ。聞いちゃダメ。
必死に自分を言い聞かせて、精一杯出来た行動は両手で自分の耳を塞ぐことだけだった。
そのまま、ぎゅっと目を瞑って、顔を伏せる。

